誰にでも優しい君は、誰からも愛され、
まだ若くて、美しくて、その優しさは無限だと思っているかもしれないが、
だけどそのままでいけば、君はいつか破滅を迎えるんだ。
みんなが優しくしてくれる、だから君はその人たちに心を許すんだよね。
ただ、この街に揺らいで、生きていく人たちには見たくない「未来」があるんだ。
人生がただの暇つぶしなら、生きていくには易しい街さ。
愛嬌をふりまき、酒を呑んでは意味の無い会話を重ね、そうして時間は過ぎていく。
朝日が昇るころに眠りにつき、目覚めた頃にはまた夜がやってくる。
煌びやかなネオンの下の蝶や花たち、
だが日の当たる明るいところに出てみればわかる。
そう、お前たちは以外ともう「大人」なんだ。
お前に優しい皆を大切にしたい気持ちは分からなくもない。
そうやって生きてきたんだし、そうやってしか生きて来れなかったのだから、
変える勇気が湧かないんだよね。
でも、体も心も一つしかないんだよ。
全てを大切にしようとしてたら、
いつかその優しさは君自身を覆いつぶし、思わぬときに、大事なものを失う。
ひょっとしたら一番大事なものを失う。
だから、人は大切なものに順番をつけるんだ。
一番大事なものを決めて、まずはそれを守る。
そして、心は痛むけど、いくつかの大事なものを諦め、切り捨て、
そうやって人は「大人」になっていく。
ぬるま湯につかって傷をなめあうこの街と、お前の優しさと酒は触媒になってるんだ。
そして、煌びやかなネオンは明るく眩しいけど、本当に映すべきものを隠してしまう。
そういう僕も、君の優しさに助けられ、癒され、なんとかやってきた。
だが、大人になろうとしてもがき始めた君が、今、気づきつつあるのなら、
今は、もうその優しさに甘えるわけにはいかない。
今優しさを口にすれば、結局それは君を傷つけていく。
君が君であるために、
僕が僕であるためにも、
モラトリアムな街の風に揺られながら、
君も僕も、
今はこれに勝たなくちゃいけない。