2011年11月2日水曜日

"境界" ―The Border―

世界と、また違う別の世界と
目に映る像は、いつだって光が創る、その境界面

目に映る光に魅かれ、導かれ
ただ、それだけじゃ足りないから
近づいて、境界面に手を伸ばしてみるんだ

手が届けば
目に映らない温度や、なめらかさに触れ
その向こうの、光放つ世界の温もりや瑞々しさを感じられるかもしれない

触れられないのならば
境界面は、どこからか放たれる光の映し出す輪郭
ただの像なのかもしれないのだから
目を閉じ、目に映る光を遮ってみる
その時はじめて、
世界の、凍てつく痛みが、渇きが、匂いが
心に届くこともあるだろう

向かい合った心は、必ず、二つの世界を映し出す
ボクの目に映る世界にはキミの姿が見えるけど、ボクの姿はない
キミの眼に映る世界にはボクがいるけど、キミがいないように

だからそんな時は、目を閉じ
不確かな想像の中で、
ボクはキミになり
キミはボクになる

出来ないよね
出来ないけど、してみようとする

恋って、そんな感じかな

同じ向きを向いて
同じ世界を見つめ始めた時に
例えばキミとボクに見えていた二つの世界が、一つに重なることもあるのかな

あるいは、二人で目を閉じて
目に映る光を遮り
目には映らないけど、確かな温度や湿度や匂いを感じてみようよ

そしたら、どこを向いているとか関係なくなって
二つだった世界が一つになって

愛って、そんな感じなのかな


世界の数は心の数より、だからきっと愛の数だけ少ないね
70億の心が映し出す70億個の世界も
たった一つの球面上に浮かぶ、たった一つの世界の一部

なんとなく、それが希望


今一人で、空と雲と地の境界を見つめていた
目を閉じ、ただ一つの世界となって
世界の中心に心を向け、その残像を感じてみた

光を放つものはそれ自体が輝いているのか
それとも、どこからかの光を反射している鏡なのか
あるいは、ガラス玉のように硬く透きとおり
ただ光を透過しているだけなのか


目には映らない光が、光の放つ源に導いてくれる
そんな気がしただけ

それも、また、幻なのかもしれないけど




Kouichi Teratani /詩篇"境界" Kao.(Kaori Ogura)の写真をお借りして、一篇の詩を書いてみました。